
ユージーン・スミスの残した白黒フィルムと無数のオープンリールのテープは 821 6th Ave, New York に現在も残るビルに集うジャズミュージシャンを記録していました。
これらを元に製作された映画がThe Jazz Loft According to W. Eugene Smithであり、日本ではこれをジャズ・ロフトと短縮したタイトルで上映しています。
映画はユージーン・スミスのここへ至る半生を序盤に少し、そこからは彼が記録した写真と人々の証言記録などを元にここで起きたことや、ミュージシャン達がどんな人でどんな事をしてどんな事を人に与えたかを語りかけます。
私が興味を惹かれたのはズート・シムズじゃなかった、セロニアス・モンクとホール・オーヴァトンでした。
確かこの二人がタバコの焼け焦げだらけのピアノを並べて作曲していく過程や、できた曲をジャズバンドに落とし込む苦労話なんかが聞けて大変興味深かったです。
Thelonious Monk With Hall Overton, 1959
ピアノで作ってしまったので各パートに割り振るのが難しかったらしいんですよ(これなんて言う曲だったっけなあ、パンフレット買えばよかった)。
(判明しました、The Thelonious Monk Orchestra At Town Hallでした、左のリンクはApplemusicです)
この映画を通じて「ニューヨークはマンハッタンのど真ん中で、こんなコアで素晴らしい混沌が存在していたんだなあ」と思いました。
アーティストがニューヨークを好んだ理由ってこれですかね?
現代の東京にもこんな空間ないかなあ?私でも参加できるようなジャンルで。
ちょっとミュージシャン達が羨ましくもあり、また、心配にもなる一本です。
ちょっとジャズの扉をもう一枚開いてみるのに最適な映画と存じますので興味のある方には大変お勧めの一本となっておりますが、これを一般的なドキュメンタリーとして見るのはちょっとお勧めできません。
と申しますのも、この映画は始まりから終わりにかけて何かがまとまってるわけでは無いからです。
ここをユージーン・スミスが借りていた期間が決まっていてその間に何があったのかを時系列で語っているに過ぎませんので我々はそのマンハッタンの一角を写真と音とそして時系列のある一部分を覗き見るような感じに仕上がっています。
あと写真好きならユージーンスミスの代表作とも言える一枚がどのようにして撮影されたかが語られる事、またその写真の背景に潜む彼の人生がその子供達によって語られるあたりは非常に貴重な情報と言えるでしょう。
そして最後に本当に個人的になんですが

この映画を見にいく直前にイルフォードのフィルムを買いにヨドバシカメラに私は向かったのです。
しかし店頭在庫にはアクロスとこのトライエックスしかありませんでした。
海外のモノクロームを使いたいと思った私は(作例を見て決めました)コダックのTRI-X400を選択。
映画館の周辺で数カット撮影してから妻と二人でこの映画を鑑賞したのですが、見てたらユージーン・スミスの撮影したモノクロームフィルムのスリーブがスクリーンに映し出されて、フィルムの脇には書いてあるじゃあ無いですかTRI-Xって!
ちょっとした偶然に私はとっても驚いたのでした。
コンタックスアリアのカウンターを見ると残りのカット数は23枚はあるようです。
このままプラナー50MMで何枚か撮ったら、ディスタゴン28MMに付け替えてどこかの街中を撮影してみようかな?
なんて思ってます。
スリーブの脇には今はなんて刻印されているんだろう?